• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第59章 すれ違い


「だ、誰ですかあのひと……!」

「いや、だから名前知らないんだって」

きょとんとした顔でそう言うさりあさん。
まるで私の方がおかしな事を聞いているとでも言いそうな雰囲気。

「合鍵まで持ってて、知らないなんてことあるんですか…!?」

「あー、あるよ。クラブで気が合ってそのままヤッた奴とか、相性良ければ渡したりするし」

「さりあさん、そういうのはもうやめた方が……」

「ねえ、貴女はあたしの事、嫌いじゃないの?」

「え?」

「リョウタの件、許してくれたわけ?」

一瞬で黒い感情が湧き上がる。
澱のように沈殿していた嫌な記憶が、撹拌されて巻き上がるかのように。

「……許していません。許せません。多分、ずっと」

拳に力が入るのが分かる。

「リョウタには怒ってないの?」

「怒る理由がありません」

「あるじゃない。迂闊にあたしとコーヒーなんか飲んで、ヤられたんだから」

この人は、どうしてこう感情を逆撫でするような言い方をするんだろう。

「……とにかく、涼太が悪いとは思っていないし、もうその話は過去の事です」

「……ふーん、貴女は自分の事だけ、許せない人間なのね」

「え?」

「貴女、過去に男と何かあったでしょ」

「……どうして」

「さっきの反応を見て。アイツに腕を掴まれた時の反応、ああ、なんかあったのかなって」

「……」

「虐待? レイプ? その辺りよね」

心臓が物凄い音で脈打っているのが分かる。
息が苦しくて、目の前が白くなっていく。

「それで、貴女は被害を受けた原因は自分にあると思ってる」

「……!」

"オマエガ ワルインダ"

「どうして、涼太の事は許せるのに、自分の過去には優しくしてあげらんないのかしら。
それこそ、まあ状況は分からないけど、貴女のせいじゃないんじゃないの」

「……そ、それ、は……」

口がカラカラだ。
息が苦しい。

「もう少し、気楽に生きたら?」

「そ、そんなの、さりあさんには関係の、ない事で」

「貴女だって関係のない事でついさっきからあたしに説教してるじゃない」

「…………」

「ちょっと、考えた方がいいわよ。
もしその荷物が重いなら、リョウタにも持って貰えばいいじゃない」

「そんな、こと」

涼太に迷惑だけはかけたくない。




/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp