第59章 すれ違い
窓の外が明るい。
という事は、オレは眠っていたのか。
……風呂を上がってからの記憶がない……。
身体が温かい。
思ったよりも、疲れが残っていない。
あんなに怠かったのに。
ふと鼻先を擽る、甘く優しい香り。
確かめなくたって、それが誰の香りか分かる。
胸元に潜り込んでいるその身体を少し強めに抱き寄せた。
「黒子くんのお誕生日会?」
昨夜の事を陳謝してから、今月末のイベントについてみわに相談する。
「皆で集まって、バスケしようってことになってるんスよ」
「そうなんだ! ……良かったね」
また皆でバスケができるという事がこんなにも嬉しいなんて。
オレも、今からワクワクしている。
「ストバスコートは東京だから近いんスけど、みわも来るよね?」
「……え、私が?」
「折角の機会だし、皆に紹介しようかなって思って」
「いい! いい! 久しぶりのキセキ水入らずなんだから、邪魔者はいない方がいいよ。皆で楽しんで来てくれればそれでいいから!」
「えー、キセキ水入らずって……そんな事言わないでよ……。
オレは、絶対に来て欲しい」
「……あ、私はその日……あきと約束があるんだった……」
「げ、マジっスか。もっと早く言えばよかった」
「ごめんね。楽しんできて」
「もし予定が変わって来れるようになったら、来て欲しいんスけど……」
皆にみわをちゃんと紹介したい。
「うん、分かった」
……最近は、みわもここを出て行くような話をしなくなったし、少しホッとしていた。
オレの手の中からすり抜けて行ってしまうようで、それが怖くて。
酷い独占欲だ。
「涼太、そろそろ出る時間だよ」
「お、はいはいもう行くっスよ」
早くオトナになりたい。