第59章 すれ違い
ぽろぽろと勝手に涙が出てくる。
なんて自分勝手な涙なんだろう。
「あ……私、何言ってんだろ……
明日、会えるって自分で言ってるのに……」
『みわ』
「うん……」
『みわ』
それから、涼太は何度も名前を呼んでくれた。
何度も、何度も。
こんな私でも、大切にしてくれる人がいる。
一緒に……いたい。
何があっても、一緒に……。
『ん、そろそろ切るっスよ。
みわ、寝る時間なくなっちゃう』
「……うん、おやすみなさい」
『おやすみ』
チュッと、電話の向こう側からキスの音がした。
私は、電話が切れた後のスマートフォンをずっと抱きしめていた。
離れている時の方が本音を言えるなんて、どういう事だろう。
ダメだ。
頭の中が涼太でいっぱいになってしまった。
目の前に山積みになっているノートに視線を落とし、深いため息をひとつついた。