• テキストサイズ

【黒バス:R18】解れゆくこころ

第59章 すれ違い


「わっ、わたしも……」

突然携帯の向こう側から聞こえた甘すぎるそのセリフに、耳まで熱くなるのを感じる。

"好きだよ"

その一言で、泣きそうになってしまった。


『みわは今、何してんの?』

「あ、もうやる事は終わったから、ノートをまとめてから寝ようかなって」

テーブルの上にちらりと目をやる。
各部員のノートだ。

これを全てまとめるには、かなりの時間がかかるだろう。


声が聞きたい。
そう思って、つい電話を掛けてしまった。


気まずい関係になっていたわけではないけれど、以前のように肌の触れ合いがなくなって、こころの距離まで出来てしまったように感じていた。


『そっか、まとめんのも結構時間かかるでしょ。無理しないようにね』

涼太は、私が毎日のようにこのノートに時間をかけている事を知っている。

ひたすら黙々と作業に没頭していると、気がついたらカップのお茶が新しくなっていたり、お皿が洗ってあったりする。

完全に自己満足でやっていることなのに、
彼の優しさが、嬉しかった。

『そう言えば、トレーナーの人がみわの事を褒めてたっスよ』

「えっ? 私の事を?」

『普段からの鍛え方がいいって。
メニュー作っている人間が素晴らしいってさ』

「え……」

非常に照れ臭い……けど嬉しい。
いつもいつも、未熟ながら色々な事を調べて考えているメニューだ。

『ありがとう、みわ』

「え?」

『みわがいなくなると、こんなにもオレは支えて貰ってたんだなって実感する』

「そ、そんな、当たり前の事をしてるだけだよ」


『会いたいっス、今すぐ』


今日の涼太はどうしたんだろう。

いつも、比較的ストレートに気持ちを伝えてくれるタイプだけれど、今日はいつにも増して……。


『会いたい』


その声に、眩暈すら覚えた。

「あ、明日、会えるよ」

また、嫌な返し方。

本当は私だって、私だって。

『そっスよね……ハハ』

だって、そうじゃない。
毎日、今朝だって一緒にいた。


明日になればまた同じ部屋に帰る。
一緒にいられるもん。


別に、一晩離れてるの位、なんてことない。





なのに



こんな気持ちになるのはどうして?




「私もあいたい……涼太……」

大粒の涙と共に、ぽろりと零してしまった。



/ 2455ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp