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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第59章 すれ違い


「じゃあ黄瀬君、お疲れ様。
今日はしっかり食事を取ってたっぷり睡眠をとること。また明日」

そう言って、トレーナーは涼しい顔で去っていった。

「……やってくれるっスね……」

これは、超短期間で限界ギリギリまで鍛え上げるメニューだ。

身体中が悲鳴を上げている。

「……風呂入って、ねよ……」

ダメだ。
その前に食事を取らなくては。

あーー、眠い。

肉を食べなさい、の他には何か言っていたっけ。

なんか言ってた。なんかのバランスを……。

ああ、眠い……。

無人のリビングに佇む。
いつものあの声はない。

それだけで、こんなにも気力が失われるものか。

みわに会いたい。

今朝も会ったし、明日には帰ってくるのに何故こんなにも寂しく、恋しいのだろう。

今、みわは何してるかな。

長期合宿のように、1部屋1部屋回るような事はしないだろう。

もう、空き時間になっているだろうか?

ちらちらと時計を確認しながら、電話をかけようかソワソワする。
オレ、こんなに女々しかったっけ。

スマートフォンを握りしめたままリビングとキッチンを行ったり来たりしていると、手の中に振動を感じた。

「おわっと……」

驚いて画面を見て、つい口元が緩む。
みわの名前が表示されていた。

「もしもし?」

恥ずかしくなるくらいに即出てしまう。

『あっ……もしもし? 涼太?』

大好きな声だ。
聞いているだけで落ち着く、この声。

「うん、おつかれ」

『今、話していて時間大丈夫?』

「大丈夫っスよ」

『あのね、言い忘れていたんだけど、夕飯もし食べてなかったら、良ければ冷蔵庫の中のをあっためて食べて』

「えっ」

冷蔵庫はまだ見ていなかった。
そんな気力すらもなく、ウロウロしていただけなのだ。

冷蔵庫を開けると、大皿とサラダ、小鉢が見える。

『今日も厳しいトレーニングって聞いていたから、メニューをトレーニング用にしてみたんだけど……』

「ありがとう。今、何にも作る気が起きなくて途方に暮れてたとこなんスよ」

大皿にはたっぷりの肉料理。
小鉢やサラダには沢山の野菜が使われている。

『それなら良かった』

少し嬉しそうな声。

「みわ」

『うん?』

「……好きだよ」


好きだ。こんなにも。



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