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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第59章 すれ違い


「来週末、遠征ですか?」

武内監督からの突然のお話に、思わず聞き返してしまう。

こんな時期に、遠征なんて。

「遠くまででしょうか」

「いや、隣だよ。静岡だ。
だが、2日間日帰りにするには、少し遠い。
あちらさんが準備してくれる宿に1泊する予定だ」

1泊……

「こんな時期に珍しいですね」

「なんだか色々ワケありみたいでな。
うちもシーズン中は練習試合の相手になって貰ったり、遠征して来て貰ったりしているからな、まあ持ちつ持たれつというところか」

「分かりました。メンバーは1軍のみですか?」

「黄瀬は置いていく」

「えっ、それでは私もこちらに残って、彼のトレーニングでしょうか」

涼太を置いての遠征なんて、今まで一度もなかった。

「いや、その2日間、プロのトレーナーを頼んである。黄瀬の事を話したら大層乗り気でな」

「そう……ですか……」

「神崎、お前は新体制での分析を頼むぞ。
来年は今のメンバーで優勝を目指さなくてはならないんだ」

「……承知いたしました」

最近、一緒に過ごす時間が極端に減っていた。

更に、来週末の遠征。

……仕方がないことだけれども。







「ええっ!? カントク、オレ置いてきぼりっスか!?」

案の定、涼太から不満の声が漏れた。

「プロに2日間みっちり鍛えて貰えるんだ、集中するんだぞ」

「……マジっスか……」

恨めしそうに監督を見る涼太だけど、監督は一度決めたら頑として動かない。

3年生の抜けた穴はやはり大きい。
今年こそ、悲願を果たすために私たちが頑張らなければならない。

新チームで他校と試合ができるのは、非常にありがたい。

練習中では分からない微妙なズレが、接戦となっている試合中に大きな影響を及ぼす。

まずは夏までにそのズレを修整する必要がある。

新しいチームでの調整と、他校戦力の把握。
夏までに、時間がどれほどあっても足りない。




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