第59章 すれ違い
いつもは、私ばかり裸にされて涼太は最後に脱いでいるから、今の状況のように、涼太だけが全裸になっているのは珍しい。
熱くなった頭でそんな事を考えているのだから、もう何が何だか分からない。
涼太が私のブレザーに手をかける。
その動きはあまりにスムーズで躊躇いがない。
私はあっという間にブラジャーのみにされてしまった。
涼太の足が私の足に触れると、その冷たさに息を呑んだ。
待って、うっかりここまで流されていたのだけど、これじゃいけない。
きっともう浴槽にお湯は溜まっている。
今日は冷えた身体をまず温めないと、風邪をひいてしまうんだってば!
「ちょっと、涼太」
こちらの呼び声に反応すらせず、ブラジャーのホックを手で探ってプチンと外す。
毎度思うけれど、なんて器用な人だろう。
いや、そうじゃなくて!
「黄瀬くん、黄瀬涼太くん、ちょっと聞いてよ!」
「……ん? なんスか?」
ようやく返事が返ってきた。
「待って、先ずはお風呂に入って欲しいの。あったまって、その後……しよう?」
なんだか私の中でももう、する事前提になってしまっているのが悔しい。
けれど、こんなに色っぽい彼ばかりを見せつけられて我慢できるほど、私も人間できていない。
この身体に抱かれる甘さを知ってしまったら、もう逃げられない。
「うん……?」
「ちょっと、き、聞いてる!?」
涼太がのしかかってくる。
硬くなったある一点を除いては、彼の身体は冷え切っていた。
「ほら、こんなに冷えて……」
「みわがあっためてよ、オレのこと」
耳元で囁かれたその声が、耳から入ってつま先までを包み込み、一瞬で身体のすべての自由を奪った。
彼も、私も息が荒くなっているのがわかる。
どうして、言葉ひとつでこんなに欲情させられてしまうのか。
「みわの中に入りたい」
ぐらぐらした理性を、涼太はいとも簡単に剥ぎ取っていく。
私の身体は、中心に入ってくる彼の指をすんなりと受け入れてしまった。