第11章 過去
「まあ、そっからはもう分かってるだろ? 何回ヤろうとしても一向に濡れねえし、妊娠してもやべーなってことで、仕方なくずっと後ろの穴で楽しんでたじゃねえか」
思い出したくもない、記憶。
頭の中の自分は、ずっと泣いている。
「……っ」
「あの、痛い痛いと泣かれるのが好きでな。狭いし締めるしで最高だったぜ。やべえ、思い出したら勃ってきやがった」
「私は、痛みと恐怖しか覚えていないわ……」
「ちゃーんとローション使って挿れてやったじゃねえか。優しいだろ。覚えてねえのか? 浣腸済ませたケツの穴にぼくのを出し入れされて、よがって腰振ってただろ?
ああ、たまんねえ。やめてやめていたい、ジュップジュップ、ズッチュズッチュってよ、悲鳴と混じったあの音が耳から離れないんだわ」
「この、レイプ魔……」
「人聞きが悪いなあ。キミのお母さんも、キミが誘惑したって信じてたじゃないか。あれで、キミの言う事を信じられちゃったらヤバかったけどね」
「今からだって、お母さんに全部言うわ」
「無駄無駄! ぼくへの信頼は厚いしね、思春期の血の迷いってことで、彼女ももう考えないようにしてるみたいだよ」
「なんで今このタイミングでまた現れたの……?」
「だからね、ケツの穴だけで、結局一度も前には挿れてないのが心残りでな。やっときゃ良かったと、本当に後悔したよ。キミに大事なものができたみたいだから、少し脅かせばすぐヤレるなって思ったわけ」
「最低……」
こんな、こんな奴に。
こんな奴に、私はずっと犯され続けていた。
「現役女子高生とか、サイコーだろ? ぺったんこの胸も、少しは育ったかな?」
「……」
噛み締めた唇が切れているのが分かる。
じわりと広がる、鉄の味。
「カッコいい彼氏が出来たみたいだけど、ここにお泊まりはないみたいだし、まだ処女だろ? ぼくがちゃーんと貰ってあげるから……ほら、スカートめくれよ」
「嫌よ……」
「脱がして欲しいのか? 甘えん坊だなあ。もう濡れなくてもなんでも構わねえ。ほら、ぶち込んでやるから、足上げろ」
ヤツが私のスカートに手をかける。
私は、靴箱の上に置いた携帯電話を手に取って、通話口に話しかけた。
「……お母さん、今のが全部。ほんとのこと、全部」
「なっ……!?」