第11章 過去
黄瀬くんには、ほんとに大事にして貰ってる。
なんとかこの問題を片付けて、万全の状態でIHに臨みたい。
携帯電話を手に取った。
翌日、帰りはまた黄瀬くんが送ってくれた。
おやすみなさいのキスをして、別れて……別れ際にキスするなんて、初めてかも。
勇気が湧き出てくる。
……さて……
準備は整っている。あとは、自分の心が折れないように……。
同時に鳴り響く、チャイム音。
「……はい」
ドアスコープから外を覗くと、佇むヤツの姿。
「みわちゃん、ぼくだよ〜」
おぞましい声。鳥肌が立つ。
「……入って」
「あれ? 玄関しか入れてくれないの? ベッドはもう少し、盛り上がってからかな?」
「……いくつかの質問に答えて。お母さんとは、まだ付き合ってるの?」
「もちろん、もうすぐ再婚予定だよ。お父さん、って呼んでいいんだからね。一緒に暮らしたいねえ」
冗談じゃない。
おぞましいなんてものじゃない。
「お母さんと別れて、って言ったら別れてくれる?」
「それは無理な話だなあ。身体の相性いいし。ぼくはキミのお母さんの事、愛してるから。お母さん、キミのこといつも心配しているよ。戻っておいでよ」
「……」
「さあ、始めようか。自分で脱ぐ? それとも脱がせて欲しい?」
「……あなたが今まで私にしたこと、全部改めて話して。それをしてくれたら、なんでも言うこときくから」
「ヘェ〜ッ……ヒヒッそれは期待しちゃうな……どこから聞きたいのかな?」
下品な笑い。
「全部よ。初めから、全部」
吐き気がする。
二度と思い出したくもない記憶。
「全部かあ……思い出して、大きくなっちゃうなあ……あの日は、酔ってて。なんとなくキミの部屋に顔を見に行ったら寝顔が可愛くてねえ。無理矢理ぼくのを口に突っ込んだ時の、あの顔が忘れられないなあ」
「……」
「中学生の純朴なコのフェラに顔射って、オトコのロマンよ? たまんねえよなあ」
「そ、それから……」
「へへ、覚えてんだろ? そっからは毎晩、仲良くしたな。マンコに突っ込もうとしたら、全く濡れなくて入らなくて困ってな。まさか不感症とは思わなかったから驚いたぜ」
息を整えながら話を聞いているつもりだけれど、目の前には当時の映像がフラッシュバック。
全身が硬直していくのが分かる。