第10章 接触
脅されて、なんて言ったら黄瀬くんを巻き込んでしまう。
もしトラブルになって、バスケに影響が出たりしたら……
「……やっぱり洗剤撒いてもニオイが残る……ごめんなさい、恥ずかしいから帰って……」
もう、泣き出したいくらい恥ずかしい。
「みわっち、ホントにもう隠し事ない?」
「うん……でも、今後どうしたらいいかは、悩んでるところ……引っ越しても、きっとすぐまた追いかけてくるだろうし……」
「……みわっちのお母さんは、どこまで知ってるの?」
きしり、心臓が軋んだ。
「ん……前に騒動になった時は、ヤツが"みわに誘惑された"って言って、それを信じてたみたいだし……それから、おばあちゃんのところに住んでたから、もう殆ど会ってない」
泣きながら説明しても、お母さんは信じてくれなかった。
「信じてもらえないって、悲しいね」
「そうっスよ。だからオレも、オレを信じて、全部話して欲しいんスよ」
信じてるよ。黄瀬くん、信じてる。
でもそれ以上に、あなたを巻き込みたくない。
「家族に、ちょっと相談してみるね」
「オレ、本当役立たずっスわ……」
「そんなことない。黄瀬くんのおかげで、私、毎日本当に楽しいの。……生きてて、良かった」
「みわっち、好きっスよ」
「えっあ、ありがとう……私も………………すき、です」
何これ、死ぬほど恥ずかしい。
今まで散々キスとかしておいて、私ハッキリ好きって言ったことなかった!
「私、海常バスケ部の喜びが自分の喜び。試合に勝つためなら、なんでもするよ。だから黄瀬くんも、私なんか気にせず集中して欲しいの……」
「大丈夫っスよ。そこは心配しなくても、これ以上ないくらい集中してるっス。オレも今、バスケが楽しくて仕方ないんスわ」
「良かった。今、向かってるところは一緒だね。こっちの問題は私がなんとかするから、大丈夫……どうしてもの時は、相談するかもだけど」
「本当に、本当にちゃんと話してくれる? 信じてるっスよ。一人で頑張ってたら、壊れちゃうよ」
「ありがとう。大丈夫。私もいま、頑張りどきだから」
「……はぁ……その眼の時のみわっちは、言いだしたらきかないっスね」