第58章 すべて受け止めて
涼太が入ってくる。
いつもとしていることは同じはずなのに、全く別の感覚が頭をもたげる。
「あ、あぅ……!」
鏡の中の涼太は、私の腰を掴んで眉間に皺を寄せながら挿入していて、腹部に深く刻まれた筋肉と、逞しい胸板や腕に目がいってしまう。
……こんなひとに抱かれているのかと、余計に興奮してしまう……。
「ああ!」
先端が最奥まで辿り着いた。
いつもよりもずっと深い。
奥を押されるのが本当に気持ち良くて、目を開けているのすら、辛い。
更に涼太は挿れながら胸を揉んできたり、陰核を弄ってきたりするから、もう息の仕方すらわからなくなってきた。
「あぁ……は、ァ」
涼太に、征服されている。
『征服欲』とは聞いたことがあるけれど、征服されたいという欲に名前はあるのか。
いま、私の身体全部が涼太のものになっている。
そんな錯覚に酔っていた。
でも…………。
涼太が、遠い。
いつも、挿れている時は近くに居て、深くて熱いキスをしてくれる。
指を絡めて、愛しそうに手を握ってくれる。
耳元で、甘く囁いてくれる。
優しく抱きしめてくれるのに。
鏡の中にいる涼太が、遠いよ。
気持ちいいけど、さみしい。
「りょうた……!」
名前を呼んだだけなのに、涼太は上半身を屈めて顔を近づけてくれた。
「涼太……」
「ごめんね。寂しかった……?」
身長差の為せる技なのか、涼太は耳元でそう優しく囁いてくれて耳朶を食んだ。
上半身が、より私の方に寄ったせいで更に奥が抉られる。
「んん!」
もう、身体は限界に近いのが分かる。
涼太とキスがしたくて、必死で上半身を捩ってねだると、微笑んだ涼太が優しく唇を重ねてくれた。
熱くて、甘い。
「ん……ぅ……!」
脳が痺れるような感覚に、最奥を貫かれている快感が追いかけてきて一気に絶頂を迎えてしまった。