第58章 すべて受け止めて
「あー寒い寒い」
と言って、Sariさんはさっさとエレベーターに乗って行ってしまった。
私、自分の中だけで勝手に消化不良にして、何も涼太に言えてない。
「……っ、なんだよあのヒト……」
涼太も戸惑っているようだ。
私達、最近近くに居すぎて、見えなくなってしまっていたのかもしれないね。
一緒に居るだけで、分かり合えるものだと勘違いしてしまっていた。
付き合ってるんだから、っていうのが魔法みたいなものと思ってしまっていた。
そんなに、簡単じゃないよね。
言わなきゃ、伝わらないのなんて当たり前なのに。
それは、今日付き合い始めた恋人同士だって、夫婦だって同じことなのに。
何を不安になっていたんだろう。
伝えないうちから、何を勝手に思い込んでいたんだろう。
私、私の気持ちをちゃんと、伝えたい。
涼太が考えていることも、知りたい。
どう思われてしまうかがとてつもなく怖いけど。
嫌われてしまうか、嫌な想像ばかりしてしまうけど。
伝えたいよ、涼太。
ぜんぶ。
あなたへの想い。