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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第58章 すべて受け止めて


はぁ……情けない……怖かった……まさか、あんな事になるなんて。

また、涼太は怒っているだろうか。

電車内も、会話はない。
この空気、耐えられない。

もう、ウジウジ悩むのも嫌だ……!
思い切って、涼太に抱きついた。

静かな車内。
仕事初めのサラリーマンが多いのか、何処と無く気怠い空気が漂っている。

周りには、ゴトンゴトンと車両が上下する音が響くのみ。

心臓の音が、うるさい。

涼太も、静かに腕を回してくれた。



駅に着いてからも、ふたりの間に会話が無い。
いつからこんな空気になったんだっけ?

年が明けてから今まで、色んなことがありすぎて頭が追いつかない。

今は……嫌な事全部、涼太の熱で忘れたい。

想いが伝わるように、伝わるように……勇気を出して今度は腕を組んだ。

やっぱり会話はなかったけれど、歩幅は、私に合わせてくれていた。




なんか、雲が多い。
雨が降りそうだな……。

マンションに着くと、なんだかホッとする。

Sariさんは、あの後いつの間にか帰ってしまっていたみたい。
ちゃんとゆっくりお礼、言えてないな……。

「……辛気くさい」

透き通ったソプラノの声が後ろから響いた。

「Sariさん……!」

「何、なんでそんな葬式帰りみたいになってんの?」

「……アンタには関係ねーだろ」

「Sariさん、今日はありがとうございました。あの時、Sariさんがフォローしてくれたから……」

「あーもう、そういうのはいいから」

「で、でも……!」

「あたしなんかにそんな事言うより、あんた達は目の前の相手になんか言わなきゃならない事があんじゃないの」

「え……」

「人にはあんだけズカズカ言っておいて、自分たちは全く気付かないって……」

「……何が言いたいんスか」

「自分から言わなきゃ伝わんないって、教えてくれたのはみわちゃんだからね。あんた達、相手の気持ちは解ってるって勘違いしてるんじゃないの?」

「……!」


ずっと、涼太はこう思ってるはずだ、こんな気持ちのはずだって、
彼の気持ちを分かった気になってた。

自分から言わなきゃ、伝わらない。

そんな当たり前で大事な事が、出来なくなっていたんだ。



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