第57章 透明な君
「おっ、主役おふたりさん、お疲れ様! いいの出来てるよ〜!」
薄暗い中で複数人が画面に向かっている姿というのは、なかなか怖いモノがある。
「先に、使えない写真除外してるから休憩してきていいよ。呼びに行かせるから。着替えも済ませておくといい」
「そうスか? じゃあ、お言葉に甘えて」
みわの手を引き、控え室に向かった。
廊下を歩いている時も、みわは俯いて無言だ。
足取りはしっかりしているので、気分が悪いわけではなさそうだけど…。
……やっぱり気まずいんスかね、オレといるの……。
みわの控え室は、オレの控え室の向かい側だ。
「じゃあ、また後でね」
みわはすっとオレの隣から離れて、自分の控え室のドアノブを握った。
先ほどは肌が触れ合うほど近くに居たのに、なぜか今は手が届かないほどに遠くに感じる。
思わず背後から抱きしめてしまった。
「ちょッ、りょ……涼太……?」
「……行かないでよ……」
「……え?」
フラッシュを受けて輝き続けるみわが、どこか遠くに消えてしまうような気がして。
今、捕まえておかなければ永遠に手に入らないような気がして。
焦る。
「どうしたの? 着替えるだけだよ……?」
自分でもビックリするほど強い力で抱きしめてしまっている。
意識すればするほど力が入って、離してあげる事が出来ない。
なんだ、この気持ちは。
「わぁっ……!?」
そのまま、みわをオレの控え室に引きずり込んだ。