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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第57章 透明な君


「みわ、無理しなくていいんスよ」

「ううん、無理してるわけじゃないよ」

涼太は、やっぱり凄い。

撮影が始まってから今の今まで、ずっと涼太に頼りっきりだ。
緊張してしまったのをほぐして貰うのまで。

手伝うなんて言って、私結局なんにも出来ていない。

監督さんからの、オーダー。

『黄瀬君に恋をしてる設定』

……その気持ちなら私、自信ある。
魔法がかかった今の私なら、表現できるかな。

肩口から顔を覗かせる……というのは理屈では分かってるけど、どうやったらどう写るのか、というのは無知な私では想像しきれなくて。

さっきまでの涼太は、それすらも計算してポーズを取っていた。
きっと、経験があってこそ出来るものだろう。

……出来ない事をいきなりやろうとしてもだめ。
今、私ができることをやるだけやろう!

下着、外れてしまったけど付け直した方がいいのかな…。
いや、今直す時間が入ったら集中が切れてしまう。

「涼太……胸……隠していてくれない?」

ぽそっとお願いすると、涼太は嬉しそうに微笑んだ。

「お任せを、姫」

涼太の手が胸に触れる。
ドキドキの鼓動も全部、聞こえてしまいそう。

カメラは、正面のみ。
涼太はカメラに背を向けている。

まるで、沢山の目に晒されている気分。
そのレンズの奥に、数え切れないほどの人間達がいる錯覚。

黒く大きいカメラには、それ程の迫力があった。

足が震える。怖い。

『自分』を表現する事が、怖くてたまらない。

……勇気が、ほしい……!

奮い立たせるように、そっと涼太の唇を奪った。
いつもの、柔らかくて温かい彼だった。

瞬間、強い光が辺りを包む。





あれだけ大きかったシャッター音がもう、聞こえない。

ライトが熱い。

必死で、とにかく必死で動いた。


好き。

好き。

大好き、涼太。


私にはそれしかない。

なんにもない。

触れ合う肌が、熱い。

気づくと涼太が動きをサポートしてくれているのが分かった。

「ッあ……」

時々、カメラから見えない所で胸の先端を愛撫されて、熱はどんどん上がっていく。

「みわ……キレーっスよ……」

涼太の小さくて甘い囁きに包まれて、まるで身体を重ねている時のようなそんな感覚に陥っていた。


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