第57章 透明な君
「涼太……私……も、心臓が……」
何回目かのシャッター音が響いた時、腕の中のみわが助けを求めてきた。
基本的にみわは上半身のみ映り込むようになっているけど、ただボーッとしてるわけじゃない。
背後から写真を撮られるというのは、実は物凄く神経を使うものだ。
全く経験のないみわには、プレッシャーが大きいハズ。
今までの数枚は、みわの身体からオレの顔を覗かせるようなアングルで撮って貰ったけど、少し変えよう。
みわの顔が見たい。
「みわ、体勢変えよ。おいで」
カメラに背を向け震える肩を包み込んで座るような体勢になってから、唇に唇を寄せた。
撮影だから、さすがにキスはしないけど。
目と目が至近距離で合った。
不安に揺れ、涙ぐんでいる。
薄くメイクを施してある目元は、いつもよりも更に色っぽい。
怖いのにぐっと堪えているその表情に、つい煽られてしまう。
「……緊張する?」
鼻先を合わせながら、じゃれつくように話しかけると、くすぐったそうに目を細めた。
「うん、ぁ……」
オレの唇で頬を優しく撫で、みわの唇は指で愛撫すると、強張っていた肩の力が抜けて、微かに甘い声が漏れ出してくる。
カメラマンも、みわの顔を出せない以上、オレとみわの顔が近いアングルの今のタイミングでシャッターは切らないだろう。
悪いけど、みわが落ち着くまでシャッターチャンスは待って欲しいんス。
布団の中で水着に手を入れ、お尻から背中までを指でなぞると、綺麗な弧を描いて腰が反った。
「っあ……」
「……みわ、声出しちゃダメっスよ……」
バシャッ
……ん?
今、何撮ったんスか?
撮られないだろうと思っていたから、今の顔はふたりとも、かなり素のはず。
……まあ、不適切なのは後で消されるだろうから心配ないか。
みわ、まだ、ちょっと固いっスかね……。
「りょうた……」
「みわ……」
あまりにか細く、弱々しいその声が可哀想になってしまい、つい唇を合わせてしまった。