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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第57章 透明な君


「じゃ、始まるまでここで座っててね」

スタッフさんにそう言われ、メイクの時に座った大きな鏡の前に再び腰掛けた。

鏡に映った自分はいつもよりも少しマシだけれど、表情は残念なほどに引きつっている。

「みわちゃん、終わった? ……お、いい感じだねぇ」

Sariさんが覗きに来てくれた。

「Sariさんっ……」

どうしよう。
緊張してきた。
今まで経験したことのない緊張。

「あーもう、そんな顔しないの。ひとりじゃないんだから、安心でしょ?」

「でも、……私、足引っ張ったら……!」

さっきの涼太の姿。
本当にキレイで、カッコよくて、プロの顔だった。
足手まといには、なりたくない!

「いいのよ、そんな事考えなくて。せっかくの機会なんだから、楽しむことだけ考えて! パニックになったら、リョウタにちゃんと言えばどうにかしてくれるよ」

凄い。Sariさんは、モデルの涼太もちゃんと認めているんだ。

で、でも、楽しむって言ったって……!

「ベッドでスタンバる? こんな所にひとりでいるから緊張するんだよ」

「……べ、ベッドで……!?」

「監督! みわ、もうスタンバってもいいですかー?」

少し離れた場所で、監督さんが頭の上で大きく丸を作った。

「ほら、行くよ」

Sariさんは、私の気持ちが分かるんだ。
きっと、Sariさんも昔はこうだったんだ。

「ふふ、リョウタには内緒にしておいて驚く顔を隠れて見とこうっと」

……昔は、こうだったんだよ、ね……?

声を弾ませて楽しそうにするSariさんに引かれ、ベッドへ入った。

「黄瀬君入りまーす!」

来た……!

背を向けているので、姿は見えない。

「ベッドOKでーす!」

いえ……OKでは……ありません……!
パ、パニックです!

キシッと、ベッドが軋む。
振り向くタイミングを逃した。

「黄瀬君、リードしてあげてねー!」

どこか楽しそうな監督の声。
皆してヒドイ……!

少しの間があって、腰に腕が回される。
ああ、いつもの優しい彼だ。

触れた腕が強張るのを感じた。




「……みわ!?」


ああ、見つかった……恥ずかしい……!

振り向くと、驚いた顔の涼太と目が合った。




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