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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第57章 透明な君


「おもっ、お待たせいたしました」

しょっぱなから噛んで、笑われながらもスタジオに戻る。

バスローブの下はあんな恥ずかしい格好だと思うと、今すぐ帰りたくなる……。

メイクさんに連れられ、大きな鏡のついた机の前に座った。

「みわちゃんって可愛いね。素材がいいから凄く化粧映えしそう」

「あの、お化粧ってしたことがなくて」

この間ハロウィンパーティーでチークと色付きリップを塗って貰ったくらい。

「う〜ん、今日はナチュラルでいかなきゃかな。残念! ファッション誌の撮影の時は声かけてね!」

スタジオで撮影をしようって言うんだから、皆私がモデルだと思っている。

でも、Sariさんと並べば一目瞭然なのに。
本物とはとにかく質が違う!

ナチュラルといいながらも、顔全てに色々塗られた。

丁寧に説明しながら化粧をされたけれど、そもそもの名称すら分からないものだらけで、何をされているのかは把握出来ていない。

「どう? 色っぽく仕上がったかな?」

鏡に映った自分は、まるで別人みたい。
肌は何もしてないよりも何もしていないみたいに輝いているし、唇はツヤっとしている。

「メイクって凄いんですね……」

「あら、褒めて貰えて嬉しい。メイクは女の子がキレイになる魔法だからね」

キレイになる……魔法……。
今私、魔法がかかってるんだ。

その言葉を味方にして、少しだけ勇気に変換した。

「さ、次は衣装かな」

衣装さんが着て、バスローブの前面を開ける。
は、は、恥ずかしい。

「あちゃー……キミもか……」

あ、キスマークのこと……?

「ちょっと待っててね」

衣装さんは監督に話しかけ、ウンウンと頷いている。

「うん、そのままでいいって」

そう言われてホッとしたけれど、ダメって言われたら、どうしていたんだろう……?

消す方法があるのかな。
知らない事だらけだ。

涼太はいつも、こういうところでお仕事しているんだな。


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