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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第57章 透明な君


時は3時間ほど遡る。



「Sariさん、付き合って欲しいところって?」

Sariさんは私の手を引いたまま、離してくれない。

「リョウタの撮影、見学に来ない?」

「見学?」

涼太の撮影を?
一般人の私が?

「そんなこと出来るんですか?」

「今日に限っては出来るのよ。見てみたいでしょ? モデルのリョウタ」

それは……

「興味は……ありますけど……邪魔にならないのかな……」

「大丈夫。撮られている間は集中しているから、そんなの気にならないわ」

Sariさんがそう言うなら、そうなんだろう。

「じゃ、じゃあ……」

またとない機会。
軽快な足運びのSariさんに連れられ、青山にあるスタジオに足を踏み入れる事になってしまった。

「おはようございまーす!」

「お、おはようございます」

女性が駆け寄ってくる。

「ごめんねSariちゃん! 急に呼んで。今、黄瀬君ひとりの撮影中だから!」

「ちょっと先に見学していってもいい? この子も一緒に」

「オッケー。黄瀬君の撮影の後休憩挟むから、それまではフリーで大丈夫」

「サンキュ。いこ、みわちゃん」

スタジオというと、なんだか豪華なイメージがあったけど、オシャレさはなく無機質な廊下だ。

廊下を抜けると、開けた部屋に入った。
天井が高く、とにかく広い。

意外にも、薄暗いんだな……

部屋の中央には、家と同じくらいの大きなベッドが置いてある。
そのベッドだけは、周りと異なりどこよりも明るく照らされていた。

その中心に、涼太はいた。

彼の姿に驚き、固まる。

布団は下腹部に辛うじて引っかかっている程度で、ほぼ全裸だ。
首筋から下には、私がつけたキスマーク。
シーツの波に顔を埋め、目線だけはこちらを見ている。

次々とポーズを変え、その度に周りのスタッフさんたちからは、感嘆のため息が漏れる。

誘われている。
涼太の目を見て、何故かそう思った。

全身を使って、誘われているみたいだ。

美しい。
美しいとしか形容できないその姿に皆、釘付けだった。

「オッケー!」

男性の声が響いた。

Sariさんが私の服を引っ張った。
私はぽかんと口を開けて見とれてしまっていた。

「ちょっと控え室行くから、ついてきてくれる?」

「あっ、はい!」

私はスタジオを後にした。



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