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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第57章 透明な君


青山の撮影スタジオは、地下鉄の駅から少し離れた場所にある。
どれだけ着込んでも和らがない寒さに背を丸めながら先を急いだ。

みわ。
お願いだから朝から誘わないで。

気持ちよさそうにオレの布団にくるまる姿がまるで天使のようで、羽が生えて飛んでいってしまうかと思った。

眩しいほどキレイになったみわは更に儚げになり、ずっと掴んでいないとスルッとどこかへ逃げてしまうような、そんな感覚に陥る。

……今日は早く撮影を終わらせたい。
みわを隅々まで感じたい。





「オハヨウゴザイマス」

マネージャーが既に控え室前で待機している。

「おはよう黄瀬君、着替える前に監督が話したいって」

「リョーカイっス」

そう言われ、控え室には入らずスタジオに先に立ち寄った。

「おはよう」

「オハヨウゴザイマス!」

カメラマンや監督達と先に注意事項などを確認するのだろう。
このふたりのタッグが作る世界観は美しくて儚げで……好きだ。

撮影が入ってしまったのは不本意だけど、どうせ撮ってもらうならいい作品にしたいと思う。

「今日は宜しくね。セミヌードで色っぽいの沢山貰うよ」

「せ、セミヌードっスか!?」

待って。
初耳なんスけど。

「いい顔頼むよ」

「それで、相手役の子なんだけどね」

「相手役!?」

監督は1枚の紙を取り出した。
今売り出し中のグラビアアイドルが写っていた。

「今日は官能映画の如く絡んで貰うよ〜」

マジか。
オレ、今年厄年?

「大変です! 監督!」

バタバタとスタッフが駆け込んでくる。

「相手役の子、新幹線移動中に架線火災で完全に立ち往生しています!」

「復旧見込みは?」

「見込み立たずだそうです……」

「うん、じゃあ代役立てよう」

あまりにアッサリした監督の言葉に思わず口を挟んでしまう。

「えっ、いいんスか?」

普通は仕方なく別日とかに……そんなにスケジュールがタイトなのか。

「元々、ゴリ押しで決まった子だ。イメージと合っているわけではなかった」

なるほど。
丁度良かった、ということか。

「モデルのSariなら、今日空いてます」

Sari。
この世界は意外に狭いから、モデルをやっていればいつかまた、と覚悟はしていたけど。

期間が短すぎるっスよ……。


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