第57章 透明な君
今晩は結局お姉さんに説得されて、お泊まりする事になってしまって。
今はベッドの上でお喋りをしている。
大きなベッドを好むのは涼太と同じなんだな。
「みわちゃんはさ、どうしてバスケ部のマネージャーをやろうと思ったの?」
「あ……きっかけは涼太くんに誘って貰ったからなんですけど……。なんとなく、バスケ部の練習を見てるのが好きで」
「へえ〜。幸男君とか格好いいもんね」
幸男君?
……笠松先輩のことか。
な、なんという親しげな……!
お姉さん、凄い。
「みわちゃんは涼太のこと、好き?」
「えッ」
部活の質問からの突然の流れに、思わず聞き返してしまった。
「……好き、です」
「どこが好きなのかな」
どこ。
……頭のてっぺんからつま先まで。
……涼太のこころの中まで、全部好き。
こんなこと言ったら、変態だと思われる。
「全部、です……」
「アイツ泣き虫だけど?」
「……それって欠点なんですか?」
涼太が涙を流すのは、それだけ全てを打ち込んでやっているからだ。
それが欠点だなんて、泣き虫だなんて思ったことは一度もなかった。
「一般的には、やっぱり彼氏には強くあって欲しいものなんじゃない?」
「そういうものなんですか……。私は涼太くんしか知らないので、よく知らなくてすみません……。でも、涼太くんは強いひとだと思います」
「みわちゃんは涼太が初めての彼氏なの?」
「そ、そうです……」
彼氏のお姉さんになんという赤裸々話をしているんだろう。
「他の男の子とか、気になったりしない?」
質問の意味がよく分からない。
「どうしてですか?」
「えっ、どうしてって言われると……みわちゃんくらいのトシだと、色々目移りするものじゃない」
「涼太くんがいてくれるので、気になりませんけれども……」
「……みわちゃんと話していると、あたしの高校時代が汚れきったものに思えてくるわ……」
「それはお姉さんがモテモテだったからじゃ……」
「みわちゃんもモテモテだったら他の男の子にも興味出るのかなあ」
「あはは、出ないですよ、絶対に」
あのひと以上のひとなんて、現れるわけがない。