第10章 接触
陽の光が目に入ってくる……朝だ。
身体のだるさは取れて、頭がすっきりしている。
また、黄瀬くんに抱き締められていて……おかげでぐっすり眠れたみたい。
昨日と服装が違うけれど、朝のロードワークに行ってきたんだろうか。
全然気づかなかった。
顔を上げて時計を見る。
そろそろ、準備をしないと時間がなさそう。
そして、目に入ってきたのは黄瀬くんのキレイな寝顔。
肌はつやつやだし、髪はさらさらだし。
まつ毛が長くて、もうほんとになんなの……
どうしてこんな人がTHE・超平凡な私なんかと付き合ってるんだろう……気まぐれ?
でも私、この唇と、キスしてるんだ……。
薄くて整ったカタチの唇。
身体とは裏腹に柔らかい唇。
思わず、指で触ってしまう。
ほんとに、柔らかくて……。
ぷにぷに、ぷにぷに
キス……
してるんだよね……
ぷにぷに
「……みわっち?」
突然、黄瀬くんの目が薄く開いた。
「ぎゃあ! ごめんなさい!」
「ぷ、ぎゃあって……どうしたんスか? キスしたい?」
「……いや、あの、え、えっと……」
ニッコリ微笑んだ黄瀬くん。
額に軽くチュッとキスをされて。
「オハヨ」
「あ、うん、おはよう……」
「あーやべ、オレ二度寝してた……もう学校行かないとっスね」
えっと……そ、それだけ?
終わり?
もっと、いつもは……
「みわっち? 大丈夫?」
「……あっ、あ、そうだね、学校!」
焦って起き上がろうとしたら、足に布団が絡まってバランスを崩した。
「きゃ……!」
「みわっち!」
傾いた身体は、転げ落ちる前に大きな腕の中に包まれた。
「あぶね……落ちるとこだったっスよ、大丈夫っスか?」
「あ、ご、ごめんなさい」
太ももに、硬い感触。
こ、これって……
「あ、の、黄瀬くん……?」
「え? ……あ、これは不可抗力! 違うっス! コーフンしてるとかじゃなくて! たまに寝起きはこうなるんスよ!」
そう、なんだ……黄瀬くんも、同じ気持ちなのかと思った。
って、何言ってるの私。
私だけが意識しすぎてて、恥ずかしい。
おまけに、さっきのキスが不完全燃焼で、なんだかモヤモヤする。
「か、勘違いしてごめんね。さあ、支度しなきゃ」
「みわっち?」