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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第56章 信頼のかたち


Sariさんは、別れ際にお菓子を置いていった。

「これ……この間の看病のお礼。良ければ食べて」

「そんな、気を遣わせてしまって……」

「……ありがとう。気にかけてくれたのは、嬉しかった。リョウタとのことは……ごめんなさい……」

返事は出来なかった。
許す事なんて出来そうにないから。

彼女からは毒気が抜かれていた。
今は素直に……幸せになって欲しいと思う。








Sariさんが去って、ひとりになったリビング。
まだ午前中だというのに、何日もここで話していたと感じるほど、疲れた。

「……片付けなきゃ……」

殴り合っているうちに倒れた食器。
中に残っていたお茶がこぼれていた。

よろよろとキッチンへ向かい、布巾を取ってきてテーブルとこたつ布団を拭く。

静かな部屋に独りきりになると、涙が止まらなくなった。

「……うっ、ひっ……く……」

私のせいだ。
私があんなこと言ったから。

涼太。

涼太の顔が頭から離れない。
傷付いた目が網膜に焼きついて離れない。

「うぁ、うぁああぁあぁ……!」

許せない。
許せない。
何より、自分が。

「涼太……ごめんなさい……!」

自分の軽率な行動が、大好きなひとを深く傷つけた。
どんな理由があったって、それはもう揺るぎない事実。

Sariさんにあんなに偉そうな事を言って、私だって、自分に自信なんて持てない。

愛したい。
愛されたい。

でも、自分の気持ちの方が重くなって相手がいなくなってしまったらどうしようと不安になる。

彼女は、私自身だ。
全く同じ。

大嫌いだ、こんな弱い自分なんて。
強くなんかなれないよ。
強くなりたい。
優しくなりたい。

ボタボタと流れ落ちる涙は床を濡らし、返答のない嗚咽はリビングに響く。

腫れた頬がひどく痛んだ。




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