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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第56章 信頼のかたち


「……みんな、はなれていっちゃう」

暫くして、Sariさんは小さく、本当に小さくそう呟いた。

「おとうさん……おかあさん……あたしのこと……いらないって……」

……家庭でもひとりぼっちだったの?

「だれも……あたしのことなんて必要としてくれない……」

ぽつり、ぽつりと囁く声が静かになったリビングに響いた。

「そんなことないですよね……? 今は付き合ってる方、いるんですよね?」

「……もう……きらわれた……あたしが、気持ちを試したのが許せないって……」

「試したって、どんなことを……?」

「っ、男と……寝た」

それは……やっちゃいけないことだ。
絶対に。

「Sariさん、愛って、試したりするものじゃないよ……」

「でも……どうしたらいいのか……分からない……愛して……ほしい……愛されたい……人が……羨ましくて仕方ない……」

「相手の人にはそう伝えてる?」

「言えない……あたしなんか……愛してもらえるわけ、ない……」

いつも強気で、堂々として、美しいSariさんの本当に意外な一面。

「そんなことないよ……ちゃんと、怖がらずに思っている事を伝えて。愛してほしいなら、同じくらい自分から伝えなきゃ……」

「だって……それで、拒否されたら……あたし……」

「Sariさん。何もしないうちからそんな事言わないで。ね?」

「うぅ……」

泣き続けるSariさんを抱きしめ続けた。

細く骨張った身体に寄り添っていると、彼女のポケットから振動を感じる。

「Sariさん、電話?」

気付いた彼女がバッと顔を上げ、急ぎ画面を見ると固まった。
どうやら恋人のようだ。

「ほら、出ないと」

「……でも……」

「Sariさん。いつまでもこのままでいいの? 一生、変われなくていいの?」

Sariさんは恐る恐る応答ボタンを押した。

電話を持っていない方の手が震えている。
落ち着くように、そっと握った。

「……もしもし……うん、あたし……。……ごめんなさい……うん……」




暫くして、静かに通話は終了した。

「……これから……会う事になった……ごめんなさい……取り乱して」

「……貴女が涼太にしたこと、許したわけじゃない……でも、……今は頑張ってきて」

「……ごめんなさい……」




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