第56章 信頼のかたち
「今、何人か呼んであげるからちょっと待ってね」
画面から目を離すことなくそう言うSariさん。
「呼ぶ……って誰をですか?」
嫌な予感がする。
「誰にしようかな……リョウタが好みなら、スポーツマンタイプの顔がいいヤツかな……」
「Sariさん」
「ん? 希望、ある?」
「Sariさん、何をしようとしてるんですか」
「大丈夫よ。皆上手いからちゃんとイカせて貰えるわよ」
「私、涼太以外とそういう事しません」
「ん? そう? じゃあ強引なのがいいのかな……」
「Sariさん!」
思い切って彼女のスマートフォンを取り上げた。
「ちょッ、何すんのよ!」
「私は、好きなひと以外とそういうことはしません!」
好きでもない男に触れられる恐怖、嫌悪感、おぞましさ。
忘れられるわけがない。
「ふうん? 貴女も、私のこと可哀想な女だと思ってる?」
貴女『も』?
「……分かりません。でも、好きでもない人とそんな事をしていたら、心がバラバラになってしまうって事は……分かります」
Sariさんは美しいけれど、その目にはいつも光がない。
「あたしはそんな事になってないけど」
「いえ、なっています。Sariさん……いつも悲しそうでいつも寂しそうだから」
パンッ
乾いた音が響く。
突然の衝撃に一瞬時が止まる。
頬を叩かれた、のか。
「さっきから何? 馬鹿にしてんの? あんたに……何がわかんのよ……好きな人に愛されて……幸せしか持ってないやつに、何がわかんのよ!」
Sariさんの目には涙が溜まっていた。
綺麗な瞳が濡れている。
「あんたなんて……あんたたちなんて……当たり前の幸せを手に入れてる奴等なんてみんな不幸になればいい!」
その迸る憎悪に、言葉を失った。
「……犯したの」
「え?」
「あんた達の幸せな姿を壊したくて、リョウタに薬盛って犯してやったのよ」
「なん……」
なんてことを。
「あたしが腰振ってる下で、ゲロ吐きながら何度もイキまくる惨めなリョウタを堪能させて貰ったわよ」
言葉が、出ない。
「あなた……正気、なの……? そんな事をして、本当に楽しいの? そんな事であなたの寂しさは満たされるの?」
再び、乾いた音と共に頬に衝撃が走った。