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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第56章 信頼のかたち


「さ、Sariさん!」

急ぎ玄関から追いかけると、既に彼女はリビングでソファに腰掛けていた。

「こ、こたつって……ダッサい……これ、貴女の趣味?」

「あ、いえ……涼太が欲しいって言って」

「ふぅん」

ダメだ。
これはすんなり帰ってくれないだろう。

「……お茶入れますので、少しお待ち下さい」

諦めてキッチンへ移動する。

いつものように緑茶を入れてから、ハーブティーにすれば良かったと後悔した。
日常のものを出したくなかった。

キッチンから見える、ソファに座っている彼女はどこか疲れている様子。

「……緑茶って飲む機会がないけど……」

「気が利かなくて、すみません」

「ううん、美味しい」

Sariさんがコトンとカップをこたつに置くと静寂が訪れた。
何か話さなくては。

「あの、Sariさん」

「あたし、リョウタと寝たわ」

「……!」

分かっていた。
涼太の態度から、きっとそういう事があったんだと予想はついた。

「何度も、何度もした。出なくなるまで。写真も動画も残した。興味ある?」

「いえ……」

見たくない。
涼太が他の女性を抱く姿なんて死んでも見たくない。

「すごく良かったわ。クセになりそう」

そうでしょう。
あのひとに愛されるのがどれ程の幸せか、あのひとと肌を合わせるのがどれ程の快感か、私は良く知っている。

「Sariさんが……涼太の事を好きなのは分かっています。でも」

「あたしがリョウタを好き? そんな訳ないじゃない。あたし、恋人いるんだし」

「……え」

「別にリョウタに恋愛感情なんてないわよ。リョウタとは、気持ち良くなりたい時にセックスするだけ。それだけ」

「そ、そんなの」

「"好きじゃないのにそんなのおかしい"? "愛のないセックスなんて"って、そう思う?」

「……思います」

気持ちのないセックスなんて、なんの意味があるんだろう。

「でも実際、貴女の男は恋人でもないあたしと寝たわよ」

「……涼太は理由もなくそんな事、しません」

そんな事、するわけない。
あのひとの事は、私が一番良く分かってる。

「みわちゃんって、結構お固いのね。貴女も色んな人とシてみたら、価値観変わるんじゃないかな?」

「え?」

Sariさんがスマートフォンを弄りだした。




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