第56章 信頼のかたち
……みわが寝ている間にSariの部屋に行った時も、身体の関係を求められた。
勿論断りはしたが、みわに関しては諦めていないようだ。
今のSariは恋人に距離をとられて非常に不安定な状態なんだと思う。
今、彼女とみわが一緒にいるのは良くないことが起こる、そう思うから、今日のモデルの仕事を受けた。
少しでもSariを監視できる所にいた方がいい気がして。
路面の落ち葉を吹き上げながら頬に叩きつける冷気に耐え、撮影スタジオへ足を向かわせた。
みわのイヤーマフが、耳を守ってくれていた。
「……え、今日Sariサンとの仕事じゃねぇんスか」
「ん? そうよ? 聞かなかったの? 今日はインフルエンザになったコの代役でひとり撮影よ」
マネージャーがアッサリとそう言い放った。
「き、聞いてねぇっスよ!」
それじゃあ、なんの為に来たんだよ。
「そっかあ。ごめんね。Sariちゃんが全部説明したって言ってくれてたから、つい」
「Sariサンは別スタジオにいるんスか? オレちょっと用があって」
「ん? Sariちゃんは今日、オフだって聞いてるけど?」
……なんだって。
サアッと血の気が引いていくのが分かる。
また、嵌められた。
この撮影は、オレとみわを引き離すための作戦か。
「オレ、ちょっと電話を」
「ハイ、黄瀬くん撮影始めるよー」
「はいはい、それはあとあと! 気難しい現場監督なんだから、機嫌損ねたら帰れなくなるよ! 大丈夫、今日は早く終わるから!」
みわ……!