第56章 信頼のかたち

なんて勝手な事ばかり言ってるんだ。
Sariの事をずっと心配していたみわ。
風邪を引いた時も。

今回だって、Sariが自分のように恐ろしい思いをしたらどうしようと、心底心配していたのに。

「……みわは、いつでもアンタの事を心配してるんだ」

「はん、頼んでないわ。余計なお世話よ。上から目線で本当に腹がたつ」

「アンタを抱く事はできない」

「彼女を捨てるってことね？　彼女がこの先、どんな目に遭ってもいいってことね！？」

「そんな訳ないだろ。ただオレは、もう二度とみわを
傷付けたくない。泣いて欲しくない」

「だったらよく考えなさいって言ってんの！」

「……みわは、アンタにも幸せになって欲しいんスよ」

「……は？　何言ってんのよ……」

「オレたちの仲を壊したって、アンタに何も残らない事くらい分かってるんだろ？」

「そんなの知らないわ。気に入らないから壊すだけ。ただそれだけよ」

「オレがアンタをみわのように抱いたってアンタの恋人が戻ってくるわけじゃないだろ？」

「…………！」

「分かってんだろ？」

「リ、リョウタに何がわかるのよ」

「分かるっスよ。……オレもずっと……寂しかったから……」

ずっと、誰かの特別になりたくて、オレ自身を見てくれる人を求めてた。

「……あたしが寂しい女だって言いたいの？」

「アンタは寂しい女だ。可哀想な女。愛される事を知らない、悲しい女っスよ」

「……言ってくれるじゃない……」

Sariはギリギリと音がするほど奥歯をかみしめた。

「リョウタにとって……あの子がどんな子だって言うのよ……」

「みわはオレの全てだ。アンタからしてみたらガキの戯言かもしんねぇっスけど……。彼女がいるから、オレはオレで居られる」

本当に、大切なんだ。
なによりも、大切な女の子。