第56章 信頼のかたち
「オレの事、信じてくれるの?」
抱きしめられていて顔は見えないけど、声が震えているのがわかる。
「信じてるよ。ただ、悩む事があったらすぐに相談して欲しいの……」
身体を包んでいる腕に段々と力が込められていく。
「涼太……好き……」
これだけ、これだけ伝わればもういい。
考えたって、分からないことだらけだから。
「みわ」
密着していた身体が少し離れ、顔と顔が凄く近くなる。
これは、いつものキスの距離。
でも、風邪がうつっちゃうから今日はお預け……。
……。
キス、したい。
したいな……。
涼太はいつもの涼太らしくなく、どうしたらいいのか分からない顔をしている。
いつもなら、御構いなしにキスを迫ってくるのに。
「オレ、みわに触れる資格ねぇっス……」
まばたきとともに、下向きになった瞳と長い睫毛が揺れる。
「……前に私に言ったよね、そんな資格なんて、必要ないって」
「……」
「……うつっちゃったら、ごめんなさい」
いつも涼太がしてくれるように、彼の頭の後ろに手を回し、唇を重ねた。