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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第56章 信頼のかたち


「!」

パチッと驚くほどすっきり目が開いた。

……夢を見ていた。
暗い暗い路地を走っている夢。

"何か"から逃げている。
"何か"が追いかけてくる。

その"何か"は分からないのに、夢の中の自分はひどく怯えて逃げ惑っていた。

夢で良かった……。

身体を起こすと、強烈な頭痛と全身の倦怠感は和らいでいる。
大量の汗をかいており、ぶるっと身体が震えた。

頭のすぐ横にタオルと着替えが置いてある……涼太が用意してくれていたみたい。

びしょびしょの部屋着を脱いで、汗を拭き新しいものに着替えた。

あ、ナプキンも替えないと……。

重い身体をなんとか動かしながら部屋を出ると、廊下は静まり返っている。
涼太はリビングだろうか?

トイレを済ませ、リビングに入るが電気も点いておらず、ひとの気配がない。

風呂や私の部屋にもいない。
どこか外出してるのかな?

……喉が渇いちゃったな。

冷蔵庫を開けてスポーツドリンクのペットボトルを取り出し、コップに注ぐ。
トットットッという音が無駄に響いた。

その時、カチャリと音を殺すようにそっと玄関のドアが開く気配。

リビングのドアから顔を覗かせると、自分の部屋を覗いている涼太の姿が見える。

「おかえりなさい。出かけてたの?」

声をかけると、涼太は肩を大きく震わせて驚き、こちらを見た。

「ああ、うん、ちょっと買い物っス」

その割には買い物袋の1つも下げてないんだけど。

……。

リビングに入り、お茶を入れる準備をしながら、できるだけさらりと聞いた。

「Sariさんに会ってきたの?」

「……」

本当に嘘がつけないひとだ。
ソファの前で、座ることもせずに固まっている。

つかつかと歩み寄り、首の後ろに手を回しグイッと引き寄せた。

強くなったSariさんの香水のニオイ。
まるでマーキングされたかのよう。

「エッチなこと……してきたの?」

「し、してねぇっスよ!」

「……昨夜は?」

「……」

話せないんだったよね、今は。

沈黙ってことは、つまり……そういうこと?
耳元に唇を寄せて、耳朶を思いっきり噛んだ。

「つっ……」

赤くなった耳朶を今度は優しく舐め、愛撫するように舌先を転がす。

やり場のないこの思いを全部ぶつけるように。


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