第56章 信頼のかたち
家に帰ると、時刻は既に7時を過ぎていた事を知った。
涼太がお風呂のスイッチを入れてくれ、温かい飲み物を入れてくれている。
私は誘導されるままこたつに入り、冷え切った身体を温めていた。
「はい、みわ」
「ありがとう……」
涼太もコトリとマグカップを置いて、こたつに入ってくる。
……同じ家ってこういう時、逃げ場が無い……。
「ごめんね、遅くなって心配かけた」
それがあまりにぽつりと、突然だったので呆気に取られてしまった。
「あ……うん……すごく心配……したよ」
あの写真は、なに?
「朝までどこに……いたの……?」
「……桜木町の……ホテル」
涼太の口からホテルという単語が出て、心臓が鷲掴みされたように息が詰まる。
「……ぐ、具合でも悪くなったの……?」
「………………ごめん」
どうして謝るの。
何に関して謝っているの。
そこからうまく言葉を出す事が出来ずに、指先で温かいマグカップを弄る。
「…………………………ごめん」
涼太が、そんな事をしたなんて思えない。
合流したSariさんの気持ちが落ち着かなくて、逃げるように入ったのだろうか。
もしかしたらSariさんが怪我をしてしまったのかもしれない。
誰かに追われて仕方なく?
……涼太は軽率にそういう事をするひとじゃない。
なのに、こんな気持ちになっている自分がいる。
「私……っ、お風呂入ってくるね」
「みわ!」
呼び止める涼太に振り向きもせずにリビングを飛び出した。