第56章 信頼のかたち
寒さからか、なんなのか。
手が震えているのが分かる。
「涼太、眠ってるって……どこか悪いんですか? 怪我とか」
事件に巻き込まれた?
絡まれた人達とトラブルになった?
病院に行かなくていいの?
一体何があったの?
『ううん、そうじゃないわよ。みわちゃんなら、分かるでしょう? 何回もシて、疲れたんだと思うわ』
「な、何回もって…………何を……」
『あら、説明が必要?』
それは、それはまさか。
「涼太を、涼太を起こしてください」
『んー、でも気持ち良さそうに眠ってるし。起きたらすぐに電話させるわね』
そう素っ気なく言って通話は切れた。
何が。
直ぐに電話をかけ直す。
誰も……出ない。
どうして?
どういうこと?
涼太から、ちゃんと聞きたい。
涼太……連絡をちょうだい。
動くこともできず、その場に立ち尽くしていると、スマートフォンがメール受信を知らせた。
震える指で画面をタッチする。
送信元は涼太の名前。
心臓がバクバクと脈打っている。
気付けば、声を出して荒い呼吸をしていた。
本能的に危険を察知して指が動かない。
でも、もし何か大切な連絡だったら。
恐る恐る、画面をタッチした。
件名 みわちゃんへ
本文 ありがと
涼太の寝顔の写真が添付されてきた。
見慣れた寝顔に、体調が悪いのではないと一瞬安心する。
しかし、写真の中の涼太は衣服を纏っていなかった。