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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第56章 信頼のかたち


午前3時半。

涼太はまだ、帰って来ない。
もう2時間も経っている。

5分ごとに時計を見て、焦りを覚えた。

行きと帰りで1時間と少しあれば帰って来れる距離のはず。

もしかして、向こうで何かあったんじゃ。

涼太の携帯に電話をかけてみる。
コール音は鳴るが、応答がない。
すぐに、留守番電話サービスに接続された。

「……涼太? 大丈夫?  帰りが遅いので電話しました。これ聞いたら、一度連絡ください」

切断を押してから、改めて室内の静かさを感じてしまう。

ゾッと背筋に寒いものが走る。
スマートフォンとコート、財布を手に取って急いで玄関を出た。








刺すような冷気に頬を打たれながらマンションの入り口に立ち尽くした。

……思わず飛び出したものの、どうしよう。
涼太からは桜木町方面に行くとしか聞いていない。

今無闇にタクシーに乗って、行き違いになってしまっては仕方ない。

どこに行くこともできずにひたすら入り口とエントランスをウロウロした。

涼太。
Sariさん。

無事でいて。

何度か電話をかけてみたが、そのたびに電子音で応答され、イライラが募った。








午前5時半。
……ふたりはまだ、帰ってこない。

どうしよう、警察に。
でも、通報しようがないんだ。

胸がザワつく。
気持ちが焦って、イライラして、寒さも感じなくなっていた。

自分があんなことを言ったから。
でも、怯えるSariさんを放っておいてそのままになんて出来ない。

状況は明らかにおかしい。
どうしよう。

やっぱりタクシーで行ってみよう。
この不安にも、耐えられない。

足を踏み出した瞬間、ポケットの中に振動を感じた。

画面には涼太の名前。
慌てて通話ボタンをタッチした。

「もしもし、涼太!? 大丈夫!?」





少しの間があって、キレイな声が聞こえてきた。



『もしもし? みわちゃん?』

「Sariさん? ……涼太に何かあったんですか!?」

どうして、涼太の携帯から電話をかけてくるの?

「怪我とか、トラブルに巻き込まれたとか」

『大丈夫。大丈夫よ』

優しく、諭すような声。

『リョウタを貸してくれてありがとう。彼、今眠ってるから、起きたら一緒に帰るわ。心配しないで大丈夫』




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