第55章 街へ出よう
子ども向けの華やかな色合いの内装。
大人気キャラクターだけあって、施設内は家族連れで溢れていた。
パン屋の2階にあるカフェでは、ドリンクを頼むとココアパウダーでキャラの顔を描いてくれるサービスもしているらしく、みわも喜んでいる。
パン屋ではキャラクターの顔のパンが売られていて、入店する為の行列が出来ていた。
とにかく店内は騒がしい。
「みんな、元気だね」
この騒々しさを特に気にした様子もなく、みわが微笑んでそう言った。
オレは若干この子どもたちの泣き声やギャーギャー声で疲れ始めている。
「みわって、子ども好きなんスね」
「ん? そうかな。嫌いじゃないけど」
自覚はないみたいだが、子ども達を見て微笑む目はとても優しい。
いつもの意志のある目も好きだけど、こういう優しい目も大好きだ。
みわならいいお母さんになりそうっスね。
お茶代は洋服のお礼にみわが出すと言い張り、ありがたくご馳走になる事にした。
一息ついたオレたちは階段を降り、パン屋の横を抜けて店外に出ようとする。
どうやらピークは過ぎたらしく、今は行列は出来ていなかった。
みわがチラチラと商品棚を気にしている。
「……みわ、見てく?」
オレ、結構みわの事ずっと見てるからちょっとの変化でもすぐ気付くっスよ?
「えっ、あ、いや、いいよ時間ないし」
「時間は山ほどあるっス。寄ってこ」
パン屋の敷地内に入ると、みわの目が輝いた。
意外だ。
好きなのかな。
しかし、足元見てるというかなんというか、単価が高い。
キャラの顔をしたあんぱんが300円台で売られていたりする。いい商売だな。
「……ふたりで1個ずつ、買ってもいい?」
上目遣いで聞いてくるのは反則だって。
結局パン代も自分で出すと言って、オレの分まで買って貰ってしまった。