第55章 街へ出よう
どうしてこんなにムラムラしてしまうんだろう。
今まで、外でこんなことになるのなんてなかったのに。
涼太がいけないんだ。
あんな所でキスしたり、手を繋いだりテーブルの下から足を……とか。
涼太のばか!
そう思うと、目の前で美味しそうにパンケーキやハンバーグを頬張る彼が、物凄く憎たらしく見えてくる。
テーブルの下から攻撃してやろうかと思ったけれど、密着しているのでどうにも動き出せない。
「ん? どーしたんスか?」
思いっ切り睨み付けてやると、目が合った彼はぽわんとした笑顔で返してきた。
…………涼太のばか!!
怒りの感情にいくらか変換したら、ムラムラした気分もだいぶおさまってきた。
申し訳ないけれど、今日残りの時間はこの気持ちを持って涼太に接していこう。
そうじゃないと、おかしくなる。
バスケの事などを話しながらパンケーキを平らげ、丁度時刻はお昼時に差し掛かるところだった。
ふと後ろを振り返ると、店の外には長蛇の列が出来ている。
「わあ、凄い列」
「早めに入って良かったっスね」
まだ少し残っているフレーバーティーをポットからカップに注ぎ、他人事だからか気楽にそんな話をしてしまう。
きっと、外は寒いから早く席空けてあげないと気の毒……。
「この後、どうしよっか。みわ、買い物しない?」
「も、もうお買い物は充分。涼太は何かしたい事ないの?」
「んー、そうだ、たまにはカラオケでも行く?」
「カラオケ?」
「……あ、カラオケボックスはもう行きたくないっスかね……」
去年の夏、強姦されそうになった事件。
あのお店に行くのはもう嫌だけれど、他のカラオケ店にまでそんな気持ちを持っているわけではない。
それに、涼太がいてくれるなら……大丈夫。
「ううん、カラオケ、行こうよ。久しぶり」
「みわは結構カラオケ行くんスか?」
「中学生の時に友達と何回か行ったくらい。歌える曲、少ないよ?」
「全然構わないっスよ!」
こうして、ふたりでカラオケに行くことになりました。