第55章 街へ出よう
「みわのなんか色合いが可愛いっスね。ベリー系のだっけ?」
「うん、そう」
涼太はシンプルなロコモコパンケーキ、私は何種類かのベリーが乗ったパンケーキにした。
甘くないパンケーキはどうしたんだという話になりそうだけれど、メニューを見ていたら、やはり甘いパンケーキが食べたくなってしまって。
涼太に笑われながらも、甘い甘いパンケーキを口に運んだ。
「いいな、甘いの美味そうっスね」
「食べる?」
「うん、ひと口だけ」
「えっと……どうぞ」
好きな分だけ取ってねという意味を込めて涼太が動き出すのを待ってたんだけど、涼太は微笑んで何も動かない。
「涼太? 好きなだけ食べていいよ?」
「あーんしてくんないんスか?」
「あっ……」
あーん……!?
というのは
よくカップルがやる
キャッキャウフフな感じの
あれですか……!?
「えっ、や、やだこんな所で」
「そんな事言って、家でだってしてくんないじゃねぇスか」
そんな事、今まで頼まれた事もないのにいつも断ってるような言い方して……またその目……
ズルい!
とにかく、ズルい!!
「ね、みわ」
でも、この顔をしている時の涼太は絶対に折れない。
ニコニコした顔をしていても、絶対に折れてくれない。
言い争いをして目立つよりは、ささっと食べて貰った方が吉だ……。
パンケーキをひと口サイズに切り、上にクリームとイチゴ、ブルーベリー、クランベリーを少しずつ乗せる。
他のテーブルのひとがこちらを見そうにないタイミングをチラチラと見計らって……。
「みわ、ちゃんとあーんって言ってね」
「う……あ、あーん」
「ん」
パンケーキを口に入れた時に、生クリームが上唇についてしまった。
「あ、クリーム乗せすぎちゃったかな」
「ん、大丈夫。ウマイ」
そう言って涼太は上唇の生クリームをぺろりと舌を出して舐め取った。
ちらりと見えた赤い舌が別の生き物のようで、物凄く卑猥なものに見えてしまい、目が離せない。
思わずその仕草に釘付けになってしまった。
あの舌が、キスの時に。
えっちの時に。
考え出したら妄想が爆発してしまいそうで、慌てて小さく首を振った。