第55章 街へ出よう
「食べたいものある?」
涼太のオススメのお店に連れて行ってくれるものかと思っていたから……。
まさかの質問に、欲が出る。
「あの、前に……森山先輩が行って、すごく美味しかったってお店……」
「あー、まさかの小堀センパイとふたりで行ったっていう?」
「そうそう!」
「パンケーキ屋に男ふたりで行って、甘くないパンケーキ食べたって言ってたっスよね。行ってみる?」
「いいの?」
「うん、ちょっとだけ歩くけどいい?」
「平気!」
やった。
実は、森山先輩から
「なんかデートらしい雰囲気でいい店だったぞ。黄瀬と行ったらどうだ?」
とオススメされていたので、ずっと気になっていた。
涼太は何気ない話をしながら地下道を抜け、百貨店に入りすいすいと目的地に向かってくれる。
「あれ、みわ」
ちょうど百貨店のブランドコーナーを抜けようとしていた時に、非常に聞き覚えのある声が耳に届いた。
「あき!」
「あ、あきサン」
あきだった。
ショートコートに膝上丈のミニスカート、ロングブーツにと随分と女の子らしい。
「あけましておめでとう。デート?」
「あけましておめでとう! これからお昼食べに行くの。あきは?」
「あきのお友達?」
あきの後ろに、少し年上らしい男性が立った。
「あ、うん、いつも話してるみわ」
「ああ。いつもあきがお世話になっております」
「神崎みわです。こちらこそ……!」
わあ、あきの彼だ!
すごい、すごい、まさか会えるなんて。
「これからもあきと仲良くしてやってくださいね」
「はい!」
うわ、なんか凄く大人って感じ。
あきもいつもの感じとは全然違う。
全然……
「あき、顔赤いよ? 大丈夫?」
「えっ、あ……だ、大丈夫っ……」
あきは突然ふらふらして、彼に支えられた。
「あき、じゃあ行こうか」
あんなに突然赤くなって息も荒くなって……大丈夫だろうか。
彼は特に動じた様子もなく、あきの腰に手をやり微笑んでいるだけだ。
「ま、またねみわ」
そう言って、足早に去って行ってしまった。