第55章 街へ出よう
仕方なく言われた通りに履いてみると、腿の上の部分だけ肌色のストッキングになっていて、これは所謂、ニーハイソックスのようなタイツということだろうか。
側面がレース模様になっていて可愛い。
「みわ、履けた?」
「あ、はい!」
急いで出ると、涼太だけではなく店員さんも来ていて、更に恥ずかしくなる。
「うん、似合う似合う。んじゃこれー、着て行きますんで」
「かしこまりました。お客様、首元失礼致します」
そう言って店員さんは背中のタグを切り離してニコニコしている。
「え、涼太ちょっと」
「お客様、今日着ていらっしゃったお洋服をお預かり致しますね」
「え、あのちょっと」
テキパキと店員さんは試着室内の服を持って行ってしまった。
「ねえ涼太、洋服持って行かれちゃった」
「ああ、袋に入れてくれるんスよ」
「いやそうじゃなくて、私が今日着てきた服のこと」
何を勘違いしたのか、店員さんは今日私が着てきたニットとジーンズまで持って行ってしまったのだ。
「うん、だから袋に」
「え?」
「みわ、今日はそれ着て過ごしてね」
「え?」
ちょっと待ってよ、どういうこと?
「ねえごめん、私ひとりで話についていけてない」
「ん? みわが服がダサいって気にしてずっと元気ないから、それプレゼント」
「それって……」
待って。
お店の人はワンピースだけじゃなくブーティ? のタグも切っていった。
タイツが入っていたパッケージも持って行ってしまった。
「ま、待って、今日そんなに持ち合わせがなくて」
「だからプレゼントだって。ほら、靴履いて。行くっスよ」
「プレゼントって……貰えないよこんなに高いの!」
クリスマスプレゼントにと指輪まで貰っちゃったのに。
「いいんスよ、モデルの仕事で貰った金殆ど使ってないし」
「そんな大事なお金……!」
「ま、みわ、話は店出たら聞くから先に外に出てて」
思えば、周りの女性からの視線が痛い。
すごすごとお店を出た。
涼太はレジで何やら店員さんとお喋りしたり、財布からお金を出したりしてる。
どうしよう……
こんなに高い物……