第55章 街へ出よう
「あの……恥ずかしいんだけど……」
普段こんなに足を出すことがない。
昔から、肌の露出は控えるようにとお母さんからも厳しく言われていたから。
カーテンからこっそり顔を覗かせていたのに、涼太は問答無用でカーテンを全開にした。
「わッ、ちょっと……!」
「おお」
涼太が上から下まで見ているのが分かって、どうにもいたたまれなくなってカーテンを閉じようとするけど、がっちり掴まれててそれは叶わない。
「あの、タイツとかないから生足なんだけどあの」
「うん、めちゃめちゃ可愛い。
タイツも選んであげるから大丈夫っスよ」
一体なにが大丈夫なのか。
「靴下履いてるんだから靴履いてみてよ」
少しヒールがあって、履き口がファーになっている黒い靴だ。
ベロア素材のようなネイビーのリボンが前についているのが可愛い。
「うん、足が長いからブーティのがキレイに見えるっスね」
なんだか次から次へと褒められるので恥ずかしくて仕方ない。
「みわ、ワンピースも着てみて?」
「は、はい」
涼太に言われるがままカーテンの中に戻り、今度はワンピースを手に取る。
濃いめのグレーに、黄色のチェックが入った
これまた好きなタイプの服だ。
でもやっぱり丈が短め……。
さらりと着替えてまた外に出る。
「うーん、こっちも落ち着いてていいっスねえ」
今度は中敷がもこもこしているパンプスを履かされ、涼太はまたうーんと唸った。
「みわはどっちが気に入ったとかある?」
「え、……どっちも可愛いと思うけど」
「うん……そうっスね、決めた」
涼太はそうひとりで納得してしまう。
「ちょっと待ってて、みわ」
思えば、そんなに持ち合わせがないんだけどこれ、いくらなんだろう。
なんとなく値札を見てみると、ギョッとした。
とても今日の経済状況では払えない金額。
最初に着たブラウス1着がギリギリと言ったところか。
うん、でもこのブラウス可愛い。
少しずつ、新しくするしかないよね。
ファストファッションのメーカーばかり行っていたせいで、まさか洋服がこんなに高いとは思ってもみなかった。
ワンピースを脱ごうとしたら、カーテンの隙間からにゅっと手が伸びてきた。
「はい、これ履いて」
……タイツ?