第55章 街へ出よう
まだ年が明けて2日目だというのに、電車内も横浜駅構内も人で溢れていた。
「初売りだからか、スゴイ人っスね」
「なにこれ、皆何するの?」
「福袋買ったりしてるんスかね。セールもやってるからなあ」
「涼太も福袋買うの?」
「いや、オレはその金で気に入った物を1着買うタイプ。福袋って、いっぱい入ってても使わないもの多いっスからねえ」
「そういうものなんだ」
「オレはね。ほら、はぐれないように」
そう言って涼太は微笑んで、ギュッと手を握ってくれる。
……涼太は目立つから、はぐれてもすぐに見つかると思うけど……。
「どこから行くかな……ルミナ行ってからポルト経由でマルオまで行くか……ベイハーフはちょっと歩くっスもんねえ……」
何語だろう。
「うん、東口からっスね。ビブロは最終手段にしよう」
……何か決まったらしい。
「……みわは、行きたいとこあるっスか?」
「え、ない」
「……ぶはっ」
あまりの即答に涼太が吹き出した。
「だ、だってこんな風に来たことないから」
「じゃあ今日はオレに付き合って貰うっスよ」
こうしている間にも、道行く女性がチラチラと涼太を振り返っていく。
JRの改札がある広場から直結しているファッションビルの入り口を抜けると、中はさらに大変な事になっていた。
「ひえ……」
思わず慄く。
福袋やセール目当ての女性で店内がひしめき合っている。
というか、涼太本当にここで買い物するの?
滅茶苦茶目立つんですけど!?
入り口正面のエスカレーターで上に行くらしい。
エスカレーターには私を先に乗せてくれる。
後ろに乗っている涼太と、身長差がなくなってなんだか新鮮。
寝ている時にしか触れないサラサラの髪を思わず触ってしまった。
「ん?」
最初は驚いたように目を合わせた涼太だけど、すぐに優しく微笑んでくれる。
「ごめんなさい、つい」
「いいっスよ、みわに髪触られんのスキ」
突然そんな事を言われて、自分でも顔が真っ赤になったのが分かる。
何か言い返そうとしたのに、エスカレーターは私達を次の階で吐き出した。