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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第55章 街へ出よう


ひょこっと自室から顔を出しても、廊下に涼太はいなかった。

まだリビングに電気が点いているようだ。

「涼太、おまたせ」

リビングルームのドアを開けると、すぐ左手のキッチンで、整理棚を開けて何かをしている涼太。

「お、じゃあ行こうか」

「何か探し物?」

「ううん、お茶のストックなくなりそうかなって」

本当に几帳面だなあ。

「今日買って帰る?」

「うん。みわも選んでくれる?」

「うん!」

涼太はバサリとカーキのモッズコートを羽織る。
スラリと長い黒のパンツ姿が格好いい。

玄関で、濃いブラウンのブーツを履いている。

それにひきかえ、私は……。

恥ずかしくて涼太の顔が見れない。

「みわ? どしたの?」

「……私、ダサい服しか持って無くて……」

ホントに情けなくて顔が見れない。
楽しくお出掛けしたいのに。

「じゃあ、服も買おうか」

「え?」

「外でいいのあったら、服買お」

「う、うん……」

手持ちだとそんなにちゃんとしたものは買えないかもしれないけれど……。

でも、家賃が浮いている分を少しだけこういう所に回してもいいよね?

おばあちゃんはいつも、もっと好きな物を買いなさいと言ってくれるけど、甘えてばっかりもいられないし。

……玄関で古い靴を履いてますます恥ずかしくなった。

「……涼太、恥ずかしくない?」

「ん? 何がっスか?」

「……なんでもない」

私の気持ちを知ってか知らずか、いつもより強く手を握られた。

「んじゃ、横浜からっスかね」

「今日は横浜で遊ぶの?」

「うん、あの周辺にしよっかなって」

「えへへ、楽しみ」

涼太と居られるならどこでもいいんだけどね。

「みわ」

「ん?」

玄関で、軽く唇が重なった。

「〜〜〜っ!!」

「毎日行ってらっしゃいのチュウすると、旦那は出世するらしいっスよ」

涼太はご機嫌でそう言った。

ほんと、油断も隙もないというか、ちゃっかりしてる……。

色違いのイヤーマフをつけて、片手は涼太のポケットの中。

それだけなのに、なんだか凄く幸せだ。




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