第55章 街へ出よう
涼太とえっちして、いってしまうとどうしようもなく眠くなってしまうので、どうか勘弁して欲しいと懇願して奇跡的に希望を飲んで貰えた。
「……仕方ないっスねぇ……」
「だって、デート楽しみにしてたから……」
「……いいっスよ……また……夜……」
涼太はぽすんと頭を枕に預けた。
「涼太、眠いの?」
「んーん、なんとなくいい気分になってるだけっス……」
こんな感じになるの、初めてだ。
「ねえ、本当に具合悪いとかじゃないよね?」
おでこに手を当ててみても、熱はなさそう。
「みわ、行く前にもうちょっとだけ抱きしめさせて」
ふわりと涼太の香りに包まれる。
あったかくて、安心する肌。
心臓の鼓動は、ゆっくりと脈打っている。
とくん、とくん、とくん
自分の心臓の音と重なって、規則的に振動するのが心地良い。
ああ、好きだな。
このひとの全部が、好きだな。
この気持ち、伝わってるかな。
後頭部を撫でてくれる涼太の手も、そう言ってくれてるような気がした。
こころがぽかぽかして、でも凄くドキドキする。
……えっち、断らなければ良かった……。
自分のワガママを通した癖に、何言ってるんだろ。
今日は1日、デートを楽しむんだ。
「……ありがと、みわ。着替えて出掛けようか」
「……うん!」
って元気に返事したものの…………
「そうだった…………服…………」
何年前に買ったか分からない謎のタートルネックのネイビーのニットと、年中イケちゃうジーンズ。
………………。
うう……
どうしよう……
ダサいとかいうレベルじゃない……
コートを着れば分からない?
ううん、そんな事をしたら1日コートを脱げずにかえって怪しい。
楽しみにしてたのに、楽しみなのに。
八方塞がりのこの状況に情けなくて涙が出てきた。
「みわ? 準備出来た?」
「はっはい、今すぐ!!」
今すぐどころかまだ下着姿だ。
「…………。」
仕方ない。
これしかないんだもん。
また、あきやさつきちゃんにお買い物付き合って貰おう……。