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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第2章 痴漢


元々、ラッシュ時ピークを避けていたから、まだ遅刻にはならない時間だけれど、そうこうしているうちに、到着する電車はどんどん混雑してくる。

まだ、学校の最寄り駅には15分以上かかる。

電車に乗るのが怖い。
でも、今日は何としてでも登校しないと。

入学式の日、新入生代表の挨拶があったのに突然高熱が出て休んでしまい、皆に迷惑をかけた。

今日は上級生とのオリエンテーションがある。
そこでまた新入生代表の挨拶をしなければならない。
自分の都合で、また迷惑をかけるわけにはいかない。

持ってきたハンカチで血を拭い、次の電車に乗るべく、ホームに整列する。

足が震える。
血の気が引いていくのが分かる。
気分が悪くなってくる……。

「これ、良ければ使って」

彼が渡してくれたのは、小さなタオルだった。
先ほど、自分のハンカチは血を拭くのに使ってしまったから、それを見て、彼が気を使ってくれたんだ。

「ありがとうございます……」

出来れば男性に物は借りたくはなかったけれど……でも、今の状態では、やっぱり必要な物で。
……お言葉に甘えて借りることにした。

「返さなくていいっスからね」

「えっ……そういうわけには!」

驚いて顔を上げた時、私はようやく彼の顔を正面から見た。

思わず、絶句。
芸能人……を身近で見たことはないけど、きっと芸能人って、こういう人がなるんだな。

こんなに綺麗な人を見たことがない。
凡人の私とは全く別世界のひと。

あんなにみっともない所を見せて、本当に恥ずかしい。

「あの、今日は本当にありがとうございました。私、もう大丈夫なので」

「とてもそんな風には見えないっスけど……でも、どうしても登校するってんなら、オレに出来ることは協力するっスわ」

え?

ホームに電車が入ってきて、ドアが開く。

既にギュウギュウに押し詰められた人を見ていると、吐き気がしてくる。

すると、彼がドアの端から乗車し、こちらに手招きをした。

「よっ……と ほら、こっち おいで」

どうしよう。怖い。
でも、このままじゃ1人では絶対に乗れない気がする。

男性を信じていいの……?
怖い……怖いけど……!

私は、覚悟を決めて歯を食いしばり、彼の招く方向へ行く。

息を止めて私もドアの端に乗車すると、発車のベルとともにドアが閉まった。


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