第54章 記憶
あれから何人の女子とも付き合ったが、誰とも恋愛に発展することはなく、心を許せる相手にはなり得なかった。
キスをする事はあっても、ベッドを共にする事はなかった。
どうして?
次第にセックスに期待や興味がなくなった自分に僅かながら焦りを覚えていた。
クラスでエロい話をして盛り上がるクラスメイト。
オレも、あれくらい純粋に楽しみたい。
中途半端に、しかも非常に偏ったかたちで女性を知ってしまったせいで後にも戻れず、先にも進めず、もどかしい気持ちで過ごしていた。
女の子は嫌いじゃない。
むしろ好きな方だと思う。
性欲は十分にある。
女性の中で発散したい。
その気持ちは変わっていないはずなのに、どうしてこんなにも変わってしまったのか。
別に、セックスだけが全てではない。
でも、セックスが出来ないことによって全てが失われてしまうような気がしていた。
さりあや彼女の友達と関係を持たなくなってから少しして、ひょんなことから別のモデルの女性とそういう関係になった。
初めてラブホテルに入ったのもこの時だ。
慣れてる女が良かった。
うっかり処女なんか奪ってしまったら後がどれだけ面倒になるか知れない。
最低だけど、あの時のオレは本気でそう考えていた。
初めてベッドでするセックスは気持ち良かった。
嫌悪感しかなかった時期から少し時間を置いたのが良かったのか、以前よりも状況は改善されていて、濃厚なキスも、秘部を触ることも出来た。
ただ、相手が彼女でなくても同じ快感を得られたと思う。
身体は興奮したが、感情の高ぶりは殆ど感じていなかったというのもある。
それに加え、『女性を感じさせなければならない』とプレッシャーのようなものを感じながら行為をしていたせいで、物凄く疲れた。
キレイな女が自分の腕の中で喘ぐのは悪くないが、彼女達が求めているのは「快楽」であって、「オレ」ではない。
オレが求めているのも「愛のあるセックス」で、「彼女とのセックス」ではなかった。
こころの繋がりなんてものを持とうとしたオレが間違っていた。
気持ち良ければいいじゃないか。
それのどこが悪いんだ?
そう思うようになっていった。
みわと出逢うまでは。