第54章 記憶
「あたしね、本名さりあ、っていうんだ。さりあって呼んで」
付き合ってるでもない相手なのに、芸名でなく本名で呼ぶ事に微かな違和感を感じた。
しかし、そんな違和感など気にならないくらい、オレは、セックスにハマった。
セックスを覚えたての猿となったオレは、さりあと仕事が一緒になるたびにセックスをした。
場所は常に更衣室や控え室のソファ。
芸能人である彼女らの自宅やラブホテルには軽率に行く事ができなかった。
そもそも、恋人がいる女なのだ。
いつも彼女が上になって腰を振った。
「今日は安全日だから、ナマ中出しOKだよ」
そう言ってきた日があった。
ナマでするのはモチロン興味があった。
でも、その頃にはなんだか愛液にまみれた膣がとても穢れたものに見えて、そこに挿れたら自分も汚れてしまうような気がして、ゴムを被せずに挿れるのは躊躇われた。
彼女の振る舞いが、そう思わせていたのかもしれない。
ナマでして欲しいと彼女は渋ったが、結局その日もコンドームをつけてした。
「アンアン、リョウタ、おっきい……!」
さりあとするのも慣れて来た頃、この喘ぎ声が若干鬱陶しくなった。
まるでAVを観ているかのような白々しい演技のような喘ぎ声。
また、AVを観て、クンニなんかを本当にする男がいるのかと目を疑った。
こんなにぐちゃぐちゃになっているココを舐めるなんておぞましい。
フェラされるのは好きだったが、クンニはしようとも思わなかった。
あんなのはAVの中だけの幻想だ。
秘部には触るのさえ躊躇われた。
得体の知れない女の膣の中なんて指を入れようとさえ思わない。
未知の穴だった。
セックスはしまくっているのに、膣は気持ちが悪くて触れなかった。
そのうち、さりあだけではなく、さりあが連れてきた友人モデルともセックスをするようになった。
相変わらず、更衣室で上に乗られるのは変わらない。
彼女達が自分で濡らし、勝手に跨り、好き放題動いて、射精すると終わる。
自分がただの自慰用の棒になったような気すらした。
興奮すると彼女達は自分で服を捲り、乳房を自分自身で揉み始めていたが、それを手伝おうという気にはならなかった。
殆ど肉のない乳房を少し掴んでは、こんなもんか、とすぐに興味をなくした。