第54章 記憶
初めてふたりで出掛けてから、Sariから連絡が入る事が増えた。
日中のメールだったり夜の電話だったり方法は様々だったが、なんとなくふたりの距離が縮まっている様な気がしていた。
「今日さ、もー機材トラブルで4時間も待たされたんだよ〜!」
「来月、大きい仕事貰えたんだ!」
彼女が話すのはいつも仕事に関することだった。
片手間にモデルをやっていたオレには分からないけど、真剣に取り組んでいるSariは輝いて見えた。
オレはうんうんと返してあげる事しか出来なかったが、Sariが満足するまで話を聞いてあげた。
自分がこのヒトから信頼されていて、必要とされているんだなと思っていた。
ある日、Sariは暗い声で
「恋人とケンカしちゃった」
と相談してきた。
そうか、恋人がいたのか。
確かに一度もそんな事、聞いた事なかったけど。
当たり前だよな、こんな中学生本気で相手にするわけない。
それにしても、恋人がいる女が他の男と腕組んで歩くか?
途端に、関係が崩れた気がした。
このヒトの言っている事は、どこまで信用していいのか疑問に思った。
電話の向こうでは落ち込んだ様子の彼女。
早く仲直り出来るといいっスね、とか、テキトーな事を返した気がする。
「ねえ、リョウタ君、あたし寂しいんだ」
電話口のSariの息が荒いのに気がついた。
「大丈夫っスか? Sariサン」
「そこで……聞いてて」
「?」
最初は何を言っているのか全く分からなかったが、電話口からピチャピチャという水音とSariの喘ぎ声が聞こえて来て、何をしているのかを把握した。
「あン、あ、リョウタ君、聞いてる……?」
「……聞いてるっスよ」
無意識にオレも自分のモノを扱いていた。
「あっ、あ、キモチイイ、あん……あっ、いく、いく……っ!」
「……っ」
そのまま、オレも達した。
Sariはオナニーにバイブやローターを使うのが好きらしく、その日は夜遅くまで電話口からバイブ音と喘ぎ声が聞こえていた。