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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第53章 初詣


「さ、寒い!」

ふたりで声を重ねた。

髪を途中で拭いたとはいえ、多少なりとも雨に濡れてしまった事には変わりない。

この季節の冷たい雨は、確実に私たちの体温を奪っていた。

帰宅するなりすぐに給湯器のスイッチを入れ、お風呂が沸くまでは温かいお茶を入れる。

緑茶ばっかりじゃ飽きちゃうかな。
気付くのがちょっと遅かった。
お風呂上がりには違うのにしよう。

「やっぱりコタツ欲しいっス! 明日買おう!」

涼太がソファで小さくなって震えている。
その仕草がとても可愛い。

はあ……ホント明日、何着て行こう。

いや、今日だってもう何年も着てる服で出掛けちゃったわけだけど。

涼太に恥をかかせたくない。

Sariさんなら、こんな風に悩む事なく涼太の隣に居られるんだろうな……。

「…………みわ?」

「わっ! びっくりした!」

「お茶、溢れてるっスよ」

カップからは緑茶が溢れていた。
考え込んでボーッとしてしまった。

「あ……」

「ヤケドしてないっスか?」

「……うん、だいじょうぶ。ごめんね」

布巾で濡れた調理台を拭き、涼太にカップを渡す。

少しの事でもこんなに動揺する自分が嫌だ。

そのあとは、なんとなくテレビをつけてなんとなくバラエティ番組を見て、ふたりで笑った。

Sariさんとはどうやって過ごしたんだろう。

付き合ってもいないのに身体の関係が……って、どういうことなのか、正直分からない。

でも軽々しく聞くべきではないし、涼太がもう昔の事だと言っているのに私のワガママで蒸し返すのは違うかなとも思っている。

考えがまとまらないままもやもやした気持ちでいると、給湯器がお風呂の準備が出来た旨を知らせてきた。

「あ、沸いた。涼太、お先にどうぞ」

「えー、みわ、一緒に入るんじゃないんスか?」

だって……今夜も……するだろうし、明日は……デートだし……

「……仕方ないっスね。じゃあみわ、先に入ってきて」

「え、涼太が先に」

「みわ」

「……はい」

こうなったら涼太は頑固だ。
言い合いしても不毛だし、私は先にお風呂に入らせてもらう事にした。



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