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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第53章 初詣


「みわ、美味しかったっス。ありがとうね。今日、泊まっていかなくて良かったんスか?」

「うん、いいの。おばあちゃんに気を遣わせちゃうし」

手を繋いで歩く帰り道。
ふたりの間の僅かな距離が嫌だ。

「……みわは、腕組んだりしないんスね」

「えっ? 腕……組んだことないし……あっでも! この間あきと少しだけ」

マジか。
あきサン、マジでみわを横取りしようとしてないスか?

「……オレ、あきサンに先越されたんスか……」

「ご、ごめんね? っていうのも変かな?」

まあいいか。
他の男と、と言われるよりもマシだ。

「くっついて歩きたいんスけど」

「……うん……」

するりと繋いだ手がほどけ、そっと俺の腕に細い腕が組まれた。

みわの頭が近くなり、彼女の香りが鼻先近くまで届くようになった。

「そうそう、やっぱコレっスね」

「……涼太、腕組むのが好きなの?」

「腕組むのがとかじゃなくて、みわとくっつきたいだけ」

「……っ、そ、そう……」

頬を少しだけ赤らめて、なんてことのないように振る舞う姿が可愛い。

「みわってあったかいっスよね」

「そう? 結構冷え性に悩まされてたりするんだけどな」

「いや、ナカはいつも」

「りょうたさん!!!」

「ぷ、ごめんごめん」

はあ、可愛い。
ついいじめたくなってしまう。

その時、頬に冷たい何かが触れた。

「げ、雨っスね」

「わ、今日降る予報じゃなかったのに!」

「家までもつかな……」

そんなオレたちの希望を嘲笑うかのように雨は大粒になり、激しさを増してゆく。

ちょうど店などが何もない道だ。
すぐそばの公園に使われていない公衆電話ボックスがあるのが見えた。

「ちょっとだけ、雨宿りした方が良さそうっスね」



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