第53章 初詣
「みわ、考えすぎないでね」
「何を?」
「なんでも」
衣類を畳むために伏せ目がちになった目が儚げで、何故か情欲を掻き立てる。
細い左肩を右手で引き、こちらを向きながら驚きの表情を浮かべるみわに口付けをした。
「……ん」
こんなところで、と抵抗するかと思いきやすんなりと唇を受け入れてくれている。
身体を強く抱き寄せると持っていた衣類から手を離し、背中に腕を回してくれた。
唾液を啜り合うようなキスで、静かな部屋に卑猥な水音が響く。
みわの息が荒いのが分かる。
必死で舌を絡ませようとしているのが健気で可愛い。
何度も角度を変えて優しく唇と口内を愛撫した。
「……っふ……、は」
薄っすら目を開けたみわと目が合う。
真っ赤な顔と欲望が染み出しているような切なく濡れた目が堪らない。
「ん……んく……んっ」
身体が熱い。
抱きしめている彼女の身体も、オレ自身も火を吹き出しそうなほど熱い。
硬くなったソレを恥ずかしげもなくみわの下腹部に押し当て、ふるふると震える腰をグッと引いた。
背中に回された指は、快感に震えながら軽く爪を立てていた。
「みわ……帰ったらゆっくり、抱かせて」
耳元でそっとお願いすると、ピクリと肩が動いたあと、恥ずかしそうに俯いてこくんと頷いた。
「っはぁ……は……」
唇が離れた後も興奮状態のみわがぎゅっと抱きついてくる。
彼女の心の中に潜めている様々な感情が迂闊に漏れ出るのを抑えるかのように。
その後も暫く無言で抱き合っていた。
若いふたりの都合を察してか、お祖母さんが戻りの遅いオレたちの様子を見に来る事はなかった。
結局、その後もずっと3人もしくはみわとふたりでいる時間しかなく、話を出来るタイミングが見つからなくて。
お祖母さんは就寝が早いらしく、早い時間におせちとお雑煮を頂いて、遅くならぬよう自宅に帰る事にした。
去る際に言われた「またいらっしゃい」には、あの話の続きを聞きたいなら、という意味が込められているような気がした。