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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第53章 初詣


「おばあちゃん、私、元の生活に戻ろうと思うんだ。今までずっとここに泊めてくれてありがとう」

「……そうかい。じゃあ、今日荷物を持って行くといいよ。ばあちゃんとこにはまた遊びに来てくれればいいから」

「ごめんね、おばあちゃん」

「黄瀬さん、面倒臭い子だけどこれからもよろしくね」

「面倒臭いなんてことないっス。大切なお孫さん、お預かりします」

頭の片隅には、先程の話が引っかかっていた。

以前も?
以前も同じような事があったというのか?
でも、それにしてはみわからはそんな話は聞いていない。

忘れている事すら忘れてしまった過去があるということだろうか?

ますます分からない。

「涼太、荷物をまとめるの手伝って貰えるかな」

「うん、いいっスよ」

「おばあちゃん、ちょっと部屋に行くね」

「はいはいごゆっくり。終わったらご飯にしましょうかね」

「うん!」

昔ながらのアニメに出てきそうな縁側のある廊下を抜け、障子を開けるとそこは8畳程の和室だった。

「ここね、おばあちゃんの部屋。私、ここで一緒に寝てたんだ」

部屋には木製の机、鏡台や背の低い箪笥など和室らしい家具が揃えてあった。

なんとなく入口横にある木製のゴミ箱に目をやると、錠剤のPTP包装が捨てられているのが目に入り、思わず手に取った。

服用した事はないが、有名な睡眠薬の名前だ。

短時間作用するものだったはずだから、入眠出来ずに苦しんでいたのだろうか。

「……みわ、これ飲まないと眠れないの?」

しまったという顔でバッと振り向いたみわが、慌てて表情を戻した。

「……あー……そんなに毎日じゃないよ。たまに、飲んでた、かな」

「病院で処方して貰ったんスか?」

薬局で買える物ではない。
しかし、お祖母さんの話では、心療内科の受診は拒み続けていると言っていたはずだけど……。

「……お家にあったの。前に貰ったのかな」

「……覚えてないんスか?」

「結構前の事だし……。あ、ごめんね涼太、そこに積んである本、ここに入れて貰える?」

「ああ、うん……」

睡眠薬に頼らなければならないほどだったのか。

過去に戻れないのはどうしようもない事だけれども、その小さな背中がより一層細く、小さく見えた。



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